2012年2月16日木曜日

ペンにはペンで 思想弾圧に異議を唱えた徳富蘆花の大逆事件直後の講演































大阪市の橋下市長の職員へのアンケート調査の文面が今日のしんぶん赤旗に掲載されていた。

「市長の業務命令として」「正確な回答がなされえない場合には処分の対象となりえます」との文言で職員に回答を迫るもの。

憲法の保障する基本的人権の擁護の規定に反する行ないという他ない。

思想、意見の異なることをもって排除しようとする姿勢がみてとれる。

新聞やTVニュースが問題の本質を伝える姿勢を常に堅持してもらいたと思う。

明治44年(1911年)大逆事件の死刑執行が1月24日と25日に幸徳秋水ら12名に対して行なわれた。

直後の2月1日に作家の徳富蘆花(とくとみ ろか)が第1高等学校で行なった「謀叛論」と題する講演がインターネットの複数のホームページで読むことができる(原稿は蘆花自身が何度も推敲した形跡があり、最終稿は正確には不明とのこと)。

蘆花自身は、幸徳らの思想に共鳴する立場でないことを語りながら、なお、異なる思想に対して対話の道を説いている。死刑は避けるべきであったと主張している。

思想を権力で取り締まるということについて批判していることの意味は大きい。

いわゆる「ペンにはペンで対応すべし」の大意が読み取れる。

時代の制約や条件で種々の認識に今日とは大きな隔たりはあっても、信念にもとづいて行動する人に対する弾圧やその手法を批判する蘆花の姿勢にこそ、共感できる。

その「講演」の結びが、「要するに人格の問題である。諸君、我々は人格を研(みが)くことを怠ってはならぬ」と呼びかけるものであったという。

当時、芥川龍之介も学生でこの講演を聞いたと伝えられている。

この講演を行なった蘆花に対しては咎(とが)めは特になかったが、校長は辞職に至ったという。

徳富蘆花は1975年頃に一部(雑誌「展望」など)で再評価の動きがあったようだが、大逆事件百年の節目であらためて関連して注目する向きもあるよう。

百年前の事であるが、新聞の報道のあり方や、政治権力の問題等、種々のことを今あらためて考えさせられる内容である。

(画像と記事は関係ありません)

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